著者は朝井リョウ。
朝井リョウの作品を読もうと思ったきっかけは、前回のブログに書いたが、「傲慢と善良(著辻村深月)」の本帯の朝井リョウが書いた文章と解説文の文才に感銘を受けたからが。
また、朝井リョウデビューが出来ていなかったこともあり、読んでみたいと思った。
そして数ある朝井リョウの書籍の中からこの本を選んだ理由は、価値観に焦点があてられた作品だと紹介されていたからだ。
価値観は個人の経験や教育、文化的背景などによって形成されるため、人によって異なることが当たり前であるにもかかわらず、異なった価値観を目の当たりにするとすんなりと受け入れることが難しいと感じていた。
しかし読書を重ねた今、この難しいと感じることに私の傲慢さがムックリと顔を覗かせているのではないかと思えるようになった。
この本は、「レンタル世界」と表題の「ままならないから私とあなた」の二篇で構成されている。
今日はまず「レンタル世界」の短編小説について。
本をめくると1ページ目から性風俗模様が描かれており、頭の中で「ピー」という音が鳴った。テレビなら放送禁止用語だろうなぁと…。(笑)
またこの小説は、人をレンタルするという行為についての考え方を問いかけるものだった。
私自身、人をレンタルするという行為にはネガティブなイメージを抱いていたが、これもレンタルする行為の問題や困難な面にのみ焦点を当てたものであり、ポジティブな側面を見落としていたとに気づけ、考えを改めることができた。
しかし個人の価値観によって、そのレンタル行為についての感じ方は随分と異なることがあるということも示されていた。
彼のこの作品を通して、自分自身の価値観について考えるきっかけを得ることができ、この小説を読み終えた今、気分が晴れやかだ。