yumeka book

本を通じて、頭や心のマッサージをお届けします

原田ひ香「三千円の使い方」

この本は、小説家であり脚本家である原田ひ香の小説だ。私がこの本を手にとったきっかけは、仕事帰りに立寄った本屋だった。様々な小説が並ぶ中で、三千円という手の届きやすい金額と本の帯に「知識が深まり、絶対「元」もとれちゃう「節約」家族小説!」との謳い文句に惹かれ手にした。そして小説冒頭は「人は三千円の使い方で人生が決まるのよ」という祖母の言葉から始まり、面白そうだと思い購入した。

この物語は主人公御厨美帆(みくりや みほ)の御厨家の家族3世代4人の女性たちそれぞれのお金の悩みやお金の貯め方、使い方を中心に描かれた人生ストーリーだ。また投資信託や格安スマホ、固定費から見直す等のアドバイスも書かれており、私が以前受けたファイナンシャルプランナーによるセミナーを思い出させた。

ここでちょっと私の受講したセミナー体験についてふれたいと思う。なかなか苦い思い出だが、セミナーを受講したきっかけは、体調を崩して給料が減った時期と老後2000万円問題がとりだたされた時期が重なったからだ。そのセミナーの案内には今も流行りのNISAやiDeCoについて説明とあったが、その説明はサラッとした程度で商品を選ぶのが難しいということを強調されていたと思う。その後、個別相談という形でNISA等とは関係のない外貨建て終身保険の説明でお金が増える仕組みを教えてもらい、私はそれに加入してしまった。何故その保険に加入してしまったのかを今考えると、NISAやiDeCoの商品選びに苦戦をしていたため提示された楽な保険商品でお金が増えるならという安易な考えに逃げたのだと思う。その後その保険は損切りして契約を終えたが、この本のストーリーで祖母が「相手がカモにしてやろうと思っているのだからこちらも賢くならなければならない」というセリフにはごもっともだと思った。

また本を読み進めるにつれ私には、主人公の御厨美帆がかなり恵まれた環境に映ったため、本の帯に書かれていた「節約家族生活」という言葉との間に違和感を覚えた。しかし主人公の美帆は家族の中では金融リテラシーが低く、姉の節約アドバイスについて「いちいち正しい」と愚痴っぽく美帆の心理が描写されている等、親近感が沸く部分もある。そして美帆が節約について勉強をする過程で読者も一緒にお金について学べるので、セミナー等を受けるよりも安全だと実体験から思う。ただし私が受講したセミナーも投資信託の説明や卵をひとつの籠に盛るな等役立つ情報もかなりあったと思うのでここに補足するが、セミナーを受講する際は少し知識があった方が良いとも思う。

そしてこの本を読み終わって、数百円の買い物でも人生を形づくるだろうと思えるようになったので、この本をきっかけにして良い方向に人生を形づくれるようになりたいと思う。